水福連携の体験談として参考になる部分を中心に、数回に分けて書きたいと思います。
スタート時は水産部分に関しての構築がほとんどとなっておりますが、後半になるにつれて福祉との構築が出てきます。
あくまで土俵は水産になります。
大事な部分ですので是非ご覧ください。
パート1は商品企画から量販店への商談までの準備期間をご紹介いたします。
この記事の信頼性
水福連携の実績で、以下の成果を上げています。
・会社立ち上げから6ヶ月で水福連携を構築
・花巻青年会議所SDGsアワード受賞(2020年)大船渡市ビジネスプランコンテストにて受賞(2021年)
・ノウフクアワード史上初となる水産企業による受賞(2022年)※外部リンク
・イオン系3社にて東北大震災10年の節目の3.11より一斉販売開始
・魚のプロ集団、田清魚店(清次郎)にて、ほや、生うにを取り扱い
・光陵支援学校にて『多様性のある働き方』の講演※外部リンク
・岩手県特別支援学校技能認定会にて審査員※外部リンク


この記事でわかること
- 水福連携における販売先への提案する手順
- 類似商品との差別方法(付加価値)
- 販売先との関係性の構築方法
他に真似できない仕組みづくり
他にできない仕組みと聞いて難しさを感じるかもしれません。
しかし、難しく考える必要はありません。大事なのは自分たちだからできたアイデアや方法です。

自分たちだからできる仕組み
物流構築
我々は物流会社としての豊富な経験を持ち、効率的な運送業務を提供してきました。
各卸問屋の特徴や納品スケジュールにも精通しており、スーパーマーケットへの納品時間など、正確に把握しておりました。
また、卸問屋との緊密な連携を通じて、効率的な商品供給とスケジュール管理を実現しました。
スーパーのニーズは消費者のニーズ
スーパーのニーズに的確に応えることができる製造方法、1日のタイムスケジュールを組むことにより高鮮度・高効率な供給を構築することができました。
サプライチェーン
サプライチェーン(水産業)の詳しい説明はこちらの過去のブログからどうぞ
サプライチェーンを構築する際、最も重視した点は安定的な供給を確保する方法です。
具体的には、仕入れの窓口を県魚連に限定せず、漁協や漁師とも包括的に協議を行う体制を整えました。これにより、必要な場合に他の水揚げ地からの供給を受けることができる状態を維持することができました。
原料単価が少し高くても安定をとる
養殖とはいえ、漁師が海に出る以上、波が高かったり潮の流れが早すぎたりすると、命に関わる危険が伴います。
そのような状況に遭遇した場合に備えて、対応策を持っている漁協もあり、我々にとっては、このような仕入れ先は非常に価値があります。
通年での生出荷
海水温の上昇や秋刀魚や鮭の不漁などから分かる通り、従来の旬の概念が崩れていました。
漁師やメーカーにとってこの状況はとても深刻な問題であり、かなり苦しい状況でした。
我々としても衰退気味の業界で、さらにコロナ禍で、全く新しいビジネスで勝負するかとても悩みました。
しかし発想を変え、夏が長くなっていること、日中の気温が25℃程度であると県内のほやの需要があることに注目しました。
従来はお盆くらいまでが販売期間とされていたほやをどこまで売り続けることができるか実験をしました。すると実際に10月まで販売をすることができたのです。
また、1年の中で最も売れないとされていた12月の後半にも、北東北を中心に試験販売を試みました。
その結果、当初の予想に反して沿岸部のスーパーが我々の殻ほや販売することとなり、さらにはそのスーパーでも午前中で完売したという報告まで上がり大成功となった。
この実験を通じて、通年でのほやの販売には十分な価値があると考えました。
商品が価格競争に巻き込まれる理由
量販店のバイヤーは売れる商品を常に探しています。なので売れる商品=消費者へのアピールがポイントとなります。

世の中に同じ商品が数多くある
例えばサバの缶詰と検索すると数え切れないほどのメーカーが出てきてきます。もしその分野で勝負する場合のライバルの数となります。
時代背景やニーズの変化、トレンド等によりチャンスがくる場合もありますが、多少の味の変化や高級サバを使用した高級缶詰ではまだまだライバルが多く、新規参入で持続可能な状態をつくるのは難しいと考えます。
そんな中で我々が選んだ商品は【剥きほや】でした。
岩手県の剥きほやを製造しているメーカーを調べたところ、震災以降どのメーカーも製造をやめており、ライバルが少ない市場でした。
製造をやめた理由を深く調べてみると、人不足で剥き作業を行う人がいないこと、宮城県産のほやが安く出回っているのが主な原因でした。
人不足の解消と宮城県産への対抗策がカギ
原因がわかれば対策を取ることができます。
まず宮城県産への対抗策として、宮城県産のほやが出てくる前にスーパーとそのシーズンの商談を行いました。
これは魚連や漁協、漁師との信頼関係をしっかり作ったからこそできる方法です。
シーズンを通じてのサイズ感や値頃感を決め、他が入れないような状態を作ることができます。
人不足に関しては先に人を集めるのではなく、需要が大きくなってから集めるしかないと考えており、あまり深く考えておりませんでした。
類似商品との差が無いと大量生産と比較される
大きなメーカーであれば機械を導入し、大量に低コストで製造することができます。
しかし、現代のニーズを照らし合わせると少量の小分けされた商品で必要な分だけ購入することが増えております。
それに伴い、大量生産、大量販売は現代と合わないと考え、比較されないようにする必要がありました。
実は日本が得意な繊細な仕事
そこで我々はSDGsの考え方に則した商品として、大量に作れないことを付加価値とし、他との差別化に成功することができました。(詳しくは後ほど別の記事でご説明いたします)
商品のストーリーに共感できない(伝えきれていない)
商品開発は簡単ではなく、さまざまな試行錯誤の上完成します。
そして、量販店に並んでる商品全てに、開発に至るまでのストーリーが存在します。
人は感情で判断することが多い
そのストーリーをいかに消費者に発信し、共感してもらえるかが購入のポイントとなります。
SDGsを武器に企業の取り組みとして提案
ほやの販売実験を終え、物流の構築やサプライチェーンの構築などさまざまなことを同時進行で進めながら県内のスーパーへ商談をしました。
結果的には大手量販店(イオン様)、大手商社(国分東北様)、仲卸(田清魚店様)がこの取り組みに賛同していただき、結果として、販売することができました。

商品がない、単価も未設定
商談の時点では実際に製造はしておりませんでした。
我々がどんなに素晴らしいと思っていても消費者に届かなければビジネスとしては失敗です。
なので今までの準備は殻ほやの試験販売以外は全て机上論でした。
当然、商談も商品サンプルもなく、具体的な商品単価もなしでバイヤーとお話しをさせていただきました。
我々の取り組みはSDGsを理解していることが前提での商談でした。バイヤーの中にはSDGsを初めて聞いたという方もおり、かなり苦戦しました。
SDGsの必要性を1時間かけて説明した後に、取り組みを1時間話したこともありました。
サプライチェーンは構築済み
商品以外の部分は全て調整が整っていたのでバイヤーがSDGsに興味があるかないかが、商談の焦点となっていました。
しかし、商品も単価もない状態での商談で取り組みに共感してくれる量販店はなかなかありませんでした。
そんな中で一番最後に商談をした、イオンスーパーセンター株式会社様はとても興味を持っていただくことができました。
また、国分東北(当時は国分フードクリエイト)様もとても興味を持っていただき、さまざまな角度から商談することができました。
岩手県のスーパーに商談した結果
最後に商談させていただいたイオンスーパーセンター様ではイオングループ内でも異例の3社同一規格、同一値段による販売を復興10年の節目である3.11より販売開始したいというお話しを後日いただくことができました。
国分様からも同じくらいのタイミングで是非取り扱いたいとありがたいお話をいただきました。
社会や環境にとって良い方法で利益を生むこと=CSVという考え方で提案することにより、結果として、取り組む必要性を強調することができ、日本でも最大手の量販店や商社に対して取り組むことができました。
これは名誉なことであり、ビジネスで大事なのは事業の規模ではない。
という証明にもなったと思います。
さいごに
水福連携、SDGsは水産業に浸透しておらず、量販店との商談に苦労しました。
しかし、考え方をしっかり学び、手順を間違わなければ、自社の強みを活かしたアイデアを模索するのみです。
問題を見極め、それぞれのやり方に合ったトータルサポートが得意
今までの水産業のやり方を変えたいと思っている方、福祉側から水産に挑戦しようとしてる方、新しい価値観を見出そうと日々勉強している方など、ゼロからの構築、持続可能な経営を目指しませんか?
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